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アニメーター 千葉様
CGI制作部 プロデューサー 伊東様
「アストロノオト」プロデューサー 田中様
2024年4月放送のTVアニメ「アストロノオト」の制作で「CLIP STUDIO PAINT」を活用いただきました。作品の見どころや、CLIP STUDIO PAINTでの制作についてお伺いしました。
テレコム・アニメーションフィルムは、宮崎駿監督作品「ルパン三世 カリオストロの城」、「名探偵ホームズ」、高畑勲監督作品「じゃりン子チエ」、エミー賞部門賞作「アニマニアクス」や作品賞受賞作「バットマン」など、TVのみならず劇場作品、CF(コマーシャルフィルム)、PVなどの制作を手がけています。
伊東さま:弊社は1975年に設立されたアニメーションのスタジオで、親会社はトムス・エンタテインメントです。元々は、海外向けの作品を中心に制作するスタジオとして設立しました。今の社長が3代目、会社としては49年になりますね。
社内には「制作部」や「作画部」があり、作画部の中には原画を描くセクション、それから動画を描くセクションがあります。また、今は在宅中心ですが「美術部」というのもあります。あとはCG関連で「CGI制作部」という部署があります。
部署としてはこのように、アニメーター、演出家、美術スタッフ、動画マン、制作、CG関連のスタッフがいて、大体70名~80名くらい在籍しているような会社です。主な仕事内容としては、アニメーション作品の企画・制作を行っています。
【アストロノオト・概要】 料理人・宮坂拓己が新たな就職先として面接に訪れた、木造アパート"あすトろ荘"。 そこは "朝食付き "が売りなのだが、可憐な大家・豪徳寺ミラの料理に耐えきれなくなった住人の要望もあり料理人を募集していたのだ。 ミラと出会った拓己はその場で一目惚れ。急遽作ったアジフライは大評判。 拓己の住み込み料理人としての生活がスタートする。 しかし、それは穏やかな日々とはいかなかった。 癖のある住人たちとの、ご近所より近く、家族より遠い距離感の中、次々と巻き起こる不可思議な現象。 ふとしたことで知った、ミラがミボー星からきた宇宙人だという秘密。 ゴシュ人から隠れなくてはいけない理由、探している〈鍵〉とは何か? 様々な事件やハードル、そして決められた朝食の予算を乗り越え、拓己はミラへの恋心を成就できるのか? 食卓から宇宙にまで広がる、新感覚SFアパートコメディ! |
伊東さま:「アストロノオト」に限らず、今、弊社で制作している作品は、ほぼ何かしらで「CLIP STUDIO PAINT」を活用しています。
元々弊社でデジタルの作画を導入し始めたのは2000年頃です。2001年に「アニメ塾」という通信のアニメーター養成講座を開設していたのですが、そこで採用していたのが当時の「RETAS STUDIO」(*)で、その後「Stylos」に移行しました。
千葉さま:「CLIP STUDIO PAINT」に関して言うと、コロナ禍の1~2年前くらいから導入を進めて、本格的にStylosから移行したのがちょうどコロナ禍の時期ですね。コロナの時期では、動画のスタッフは在宅で、PCを自宅に送って作業していました。
(* RETAS STUDIO:セルシスが提供するデジタル作画ソフト「Stylos」、ペイントソフト「PaintMan」などをパッケージングし、作画から彩色、仕上げ、撮影、そして編集まで主要なアニメ製作工程をカバーした、アニメ制作ソフトのオールインワンパッケージ。1993年に発売し、当時の国内のほぼ全てのTVアニメで使用された。現在は「CLIP STUDIO PAINT」を後継機として、アップデートは終了している。)
伊東さま:基本的には作画の工程、原画、それから動画というところが中心ですね。特に弊社の場合は、まだ紙も併用していますので、原画に関しては紙とデジタルで6:4くらいで、まだ紙の方が多いですが、デジタルで作業しているスタッフに関しては、基本的に「CLIP STUDIO PAINT」で作業をしています。逆に動画は100%デジタルなので、動画に関しては千葉さんを中心に「CLIP STUDIO PAINT」で制作を行っています。
伊東さま:管理側で言えば、コスト面ですかね。導入したい本数と機能面とを考慮したときに、他社の製品と検討しても導入しやすい価格帯でしたね。
また、ラーニングコストが良いというのもあります。先ほども触れた通り、元々「Stylos」を使っていたスタッフが「CLIP STUDIO PAINT」に切り替えていくときに、ある程度似た操作感のため習得しやすいということがありました。
千葉さま:入社したばかりの新人教育の場面でも、「CLIP STUDIO PAINT」をパソコンでは触ったことがなくても、iPadでなら触ったことがある人が半分くらいいたので、教えやすいというメリットもありました。
制作側で言えば個人的には、自分も出社や在宅で作業するときもあるのですが、出社の時はパソコンで、在宅の時はiPadで作業をしています。異なるデバイスをまたがった作業でも、「CLIP STUDIO PAINT」は使用感があまり変わらないというのが便利ですね。
コロナ禍の時に、自宅にパソコンを送って作業をするという対応がありましたが、自宅のスペース的にパソコンでの作業環境を作れないという状況で、仕方なくiPadで作業を始めたのですが、立ち上げも早いので、パソコンでなくても全然作業できるなと思いました。海外のスタジオへ出張することもありますが、iPadなら外でも作業ができますし、空港の待ち時間でずっと作業してました。iPadのみで作業できるのは強いですね。
千葉さま:小さい頃から絵を描くのが好きで、絵に関わる仕事をしたいと思っていて、もともとはマンガ家を目指そうかと考えていました。そんな時に、アニメ好きの友人から「マンガにこだわらなくても、アニメもやればいいんじゃない?」と勧められ、アニメーション制作は専門学校で学ぶことができ、自分の作業量に対してお給料が発生するという、生計を立てるまでの道筋がハッキリあるところが自分には合っていると感じ、アニメーターを目指し始めました。
アニメーターは、高い水準の作画を求められるうえ、映像として成立させるために絵のバリエーションを要求されるので難易度も高いですが、画力を高めたい人には喜びを感じられる仕事でおすすめだと思います。
伊東さま:弊社は、基本は2Dアニメーションスタイルですが、3DCGなどさまざまな手法を組み合わせて作品にしています。アニメーションの勉強をされている方たちも、絵を描くことだけではなくて、さまざまな表現手法への理解を深めてもらえるといいなと思いますね。
また会社としては、商業作品を作るアニメーターには、いかにクオリティと物量を担保してもらえるかを考えます。作品の中で力をかける部分とそうでない部分を見極めて、どのようにして効率的にモノを作れるかを考えて、工夫してモノを作るということにどんどんチャレンジしてもらいたいです。
なかなか学生のうちに経験するのは難しいと思うのですが、絵を描くことに固執しすぎず、過程を工夫できる人材が今後残ってくると思いますし、そういうことも意識できるような柔軟性を、学生時代のうちに身につけておいていただけると、受け入れる側としてはすごくありがたいです。
伊東さま:管理側では、弊社は企業向けの「CLIP STUDIO PAINT」のボリュームライセンスを80ライセンスほど購入しているのですが、利用者やバージョンの管理が更に簡単になると嬉しいです。
作画の現場だけではなく、制作進行の現場でも、指示出しなどで「CLIP STUDIO PAINT」を使っている状況があります。受け取る側にも「CLIP STUDIO PAINT」を使用してもらうのですが、そうなると会社全体でのアプリの使用本数であったり、作業者の入れ替わりが激しいため誰が使っているかなど、そのあたりの管理が煩雑になりがちです。
ボリュームライセンスのマルチプラットフォーム対応に合わせて管理機能も搭載されましたが、「CLIP STUDIO PAINT」は開発速度も早く、コンスタントにバージョンがあがっていっているので、最新のバージョンを一人使いたい人がいるときといった個別の対応や、ライセンスの切り替えなどがスムーズにいくと嬉しいですね。
千葉さま:動画に関しては、仕上げ作業で使用するソフトの「PaintMan」向けに書き出す事を想定した場合、色トレス線用の色数が3色に限られるのが一番のネックなので改善を期待したいですね。業界全体で、作画に「CLIP STUDIO PAINT」を使用している会社も増えている印象なのですが、作画に使用できる色数によって、納品形態の指定が大きく2つに分かれてしまっている感じがあります。自社の作品を作るときも、色が足りなくなった時にどうしようかなと戸惑うことがあり、やれないことはないのですが、そこがクリアできると大きいかなと感じています。
作画以外だと、映像チェックの際に修正点が見つかったときのリテイクで、すでにペイントされ仕上がっている状態のデータを一部修正するときに、「CLIP STUDIO PAINT」でより手間なく修正できたらと感じているという人も多いです。
「CLIP STUDIO PAINT」で仕上げ作業まで行う会社もいくつかありますが、求められるクオリティと作業スピードのバランスでクリアできなくて、まだ仕上げについては「PaintMan」などを使っているという現状です。
仕上げも「CLIP STUDIO PAINT」で作業できる環境が整うと、動画としても作業しやすくなるポイントかなと思います。今後「CLIP STUDIO PAINT」が仕上げ工程のツールとしてもグレードアップするというのは、期待したいところですね。
田中さま:今後は「フルデジタル」を目標にしたいです!紙を無くせたらと思いますね。
伊東さま:アニメーターの方々には「CLIP STUDIO PAINT」でデジタル制作をどんどんやっていただけているのですが、どうしても間に入る演出や作画監督の時点では、紙になっている現状があります。制作はそれを印刷したりスキャンして橋渡ししないといけない状況です。
これら全てをデジタル化することで、効率化でき、長時間労働も改善できるということもあり、やっぱり弊社としても、フルデジタルでやれる作品を増やしていかなければいけないと常々感じてます。今後は、そのためのフローを考えるなども合わせて取り組んでいきたいです。
2024年4月の「アストロノオト」の公開に合わせて、株式会社セルシスの子会社である株式会社&DC3が運営するDC3コンテンツ配布サイト「MORAEL」にて、「アストロノオト」の未公開原画などがもらえる「『アストロノオト』DC3コンテンツ無料配布キャンペーン」を実施しています。その他にも、「アストロノオト」のキャラクター原案を手掛けた窪之内英策先生による描き下ろしイラストを、DC3コンテンツとして販売を予定しています。
テレコム・アニメーションフィルムは、海外に通用するフル・アニメーションを描けるアニメーターを養成する目的で1975年に東京ムービー(現・トムス・エンタテインメント)の子会社として創設されました。日米合作作品『NEMO/ニモ』制作の傍ら、1979年には宮崎駿監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』、『名探偵ホームズ』、高畑勲監督作品『じゃりン子チエ』などの代表作を残しています。
1988年に完成した『NEMO/ニモ』は海外で認められ、ワーナーをはじめとする海外テレビシリーズ作品を多く手掛けることになりました。1997年に『アニマニアクス』でエミー賞部門賞、翌1998年には『バットマン』で作品賞を受賞しています。
2000年代からは国内作品のグロス請けや共同制作などを通して国内アニメーションに徐々にシフトしていき、元請制作会社として国内作品の制作実績を重ねてまいりました。
2012年に現体制となり、これまで培った伝統とスキルを武器にさらに新しい作品性への挑戦を続けています。『LUPIN THE IIIRD』シリーズでは『ルパン三世』の新機軸を打ち出し、2015年には30年ぶりとなる『ルパン三世』のTVシリーズを制作しています。
元請制作会社として単独での制作も請け負っており、TVのみならず劇場作品、CF、PVなどの制作も積極的に行っています。
公式サイト:https://www.telecom-anime.com/
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