http://www.nippon-animation.co.jp/
制作 山本様
制作 渡邉様
アニメーター 動画検査 大庭様
アニメーター 高橋様
「世界名作劇場」や「ちびまる子ちゃん」などの、温かみのある作品作りにこだわりを持つ日本アニメーションが、この度デジタル作画の導入に踏み切った理由についてお伺いしました。
日本アニメーションは「世界名作劇場」、「ちびまる子ちゃん」などがよく知られていると思いますが、弊社の理念は「ファミリー向け」の作品を作っていくことです。小さなお子さんやそのご両親、家族みんなが一堂に会して観ることのできる温かい作品づくりをしています。
誰でも一緒に楽しめる、そういった理念の表れとして、例えば「ちびまる子ちゃん」は字幕放送だけでなく、副音声で内容をナレーションする解説放送を提供し、視覚障害のある方にも楽しんでいただけたり、日本の放送をいち早く見たいと思う海外ファンのために、日本での本放送の直後に、外国語吹替えされた最新話を配信するサービスなどの取り組みをしています。
弊社はもともとアナログを主とした会社でありました。手描きの味にこだわり、制作を進めていましたが、色々な会社がデジタル化を進めていく中で、将来的には手描きだけで続けていくには難しい環境になるのではと考えていました。「ちびまる子ちゃん」も原画、動画を外注することが多くあるため、今後デジタルに対応する必要が出てきます。ですので、なるべく早くデジタルに挑戦したい気持ちがありました。
また過去に、外注のアニメーターさんが遠方に移住することになり、アナログでは輸送コストやスケジュールの問題があったのですが、デジタル作画に挑戦いただき上手くいった実例があり、それも後押しになりました。
ソフトウェアの性能が昔に比べて向上していることも、導入理由のひとつとしてあります。紙に近い描き味、ブラシの豊富さは大変重要です。特に「CLIP STUDIO PAINT」のブラシの豊富さは、作品の表現の可能性を高めるうえで大変魅力的な要素でした。カスタマイズが自由に出来る点もとても有用で、日本アニメーションでも大変自由にカスタマイズさせていただいております。
デジタルの導入にあたり、まずフォローをどれくらい得られるか、というところが重要でした。全員がデジタルに不慣れな中で導入するにあたり、しっかりとアドバイスやサポートをいただける環境が必要で、その点、日本の会社であるセルシス様のソフトが一番でした。実際弊社で導入させていただくにあたり、わからない点はサポートを多く利用させていただきました。疑問に対して真摯に明確に答えを提供してくれるため、仕事で運用する際も不安がありませんでした。
「CLIP STUDIO PAINT」はアニメだけでなくイラストやマンガなどの分野でも幅広く使用されているため、個人の方々が作成した様々なTIPSが存在します。そのため、こんなことはできるかな? と可能性を探りたい時、すぐに解決策やヒントが見つかるのも魅力の一つでした。
お金の面になってしまいますが、価格も重要な決定打となりました。会社で大量導入するうえでソフトの単価は見過ごせない問題です。「CLIP STUDIO PAINT」は価格帯が低いことから、より多くの人にソフトを提供するのに非常に大きな手助けになります。
日本アニメーションでは全10回のデジタル作画講座を開催し、パソコンに触れるところから、作画を行うところまでをゆっくり行いました。今までデジタルに触れたことのないアニメーターさんもいたため、最初はパソコンに慣れるところからスタートしました。デジタルで絵を描く感覚は、紙に対して鉛筆を回して描くなどの場面で、ベテランの方ほど感覚的に違うことが難しかったようです。ただ第4回くらいからはかなり習得が進み、紙に遜色ない作画ができるようになりました。「CLIP STUDIO PAINT」で「ペンの設定」や「筆圧設定」ができるおかげです。
日本アニメーションで大事にしなければならないこととして、手書き、作品の温かさを重要視しています。社内で仕事をする人達はその表現を大事にして技術を培ってきましたので、デジタル作画を推進する一方でその培われた技術が消えるようなことは決してあってはならないという基本概念がありました。紙での技術がそのままデジタルに還元されるような環境を作らなければなりません。
手描きの良さを大切にする上で弊社が行っていることの一つが、動画線を二値化(*1)しないことです。温度感のある線を描くにあたり、たとえ動画であっても二値化した線を描かないことが大事であると思いました。動画でも鉛筆のブラシで描いています。紙で描いているのと同等のブラシで作画し、最終的に仕上げで二値化はするのですが、デジタルで効率を図るだけではなく、一度そこで立ち止まって何が大事なのかを考えていきたいと思っています。
*1 二値化:線を白と黒の二階調にし、データとして編集しやすい線にすること。二値化することでデジタル処理や仕上げ処理が効率的に行える。アナログで描いたような柔らかな線とは印象が異なる。
「ちびまる子ちゃん」の動画工程で「CLIP STUDIO PAINT」を導入させていただきました。少しずつではありますが、放送作品内のカットに取り入れています。社内の仕上げ作業に「PaintMan」を使用していることから、「CLIP STUDIO PAINT」での「PaintMan向けに出力」機能は大変有用でした。
拡大して描けるというデジタルの利点のおかげで、色トレス線が複雑なカットや細かい線で潰れてしまうようなカットなども、より描きやすくなったと思います。また、「ちびまる子ちゃん」では鉛筆タッチで描かれる特殊なカットも少なくないため、仕上げスタッフとも連携を取りながら様々なスタイルのブラシでの制作にも今後挑戦していきたいと考えています。
スタートでは指導者がいてくれたので上手くいったのですが、アナログとの描き味の違いに最初はなかなか慣れませんでした。ただ段々慣れていくと描くことはできるようになってきました。個人の癖をデジタル流に変えていくのが今後の課題です。(大庭様)
「CLIP STUDIO PAINT」は元々趣味で絵を描くときに使っていました。アニメーション機能は初めてだったので手探りでしたが、理解ができるととても制作しやすいソフトですね。ペンも豊富なので、アナログ風のブラシ、デジタルらしいシャープできれいな線も描けるのはありがたいです。今後もソフトがアップデートされて進化していくことで、多くの人が使う可能性のあるソフトだと感じています。(高橋様)
まずは中心となるコアスタッフがデジタルツールを使えるようになることで、外注した大量の作画をチェックできる体制になるのが理想です。チェック工程から導入を進め、少しずつ制作フローを進化させていくことでデジタルの利点を生かしていきたいと思っています。
また、弊社は多くのアニメ会社がある地域から少し離れているため車移動が必須だったのですが、その障害をなくし、制作進行が楽になるようにしたいです。
今までアナログで手間のかかっていた部分をデジタルによって効率化していくことで、作品自体の質に目を向けることができるようになる環境が理想形です。すべての工程をすぐにデジタル化というわけにはいきませんが、徐々にやっていきたいです。
子供のころからずっとアニメ、漫画を見てきまして、中学の頃にアニメ雑誌でアニメーターの職業を知ったのがきっかけでした。もう30年やっています。始めたころはセル画の全盛期で、セル画を撮影機で撮っていましたね。
アニメーション制作で一番求められる力は、情熱、根気、体力です。動かない仕事なので体力が衰えます。好きという情熱だけじゃダメですよ、たまには運動したり体力も大切です。(大庭様)
元々絵を描くのが好きで、漫画家になろうと思って専門学校に入りました。ですがアニメを描いていく方が、絵が上手くなるのではと考え、それがきっかけでアニメーターの道に進みました。
アニメーターに役立つことは、色々なものに興味を持ってみることでしょうか。ライブに行ったり、演劇を見に行ったり、全然自分とは関係ない事でも、例えば競馬場に入ったり…(笑)。より自分で経験を積んでいっていただければ良いと思います。
また、私は同じ制作会社でも、会社ごとに色の違いがあると思います。だからこそ学生時代に自分がどういう作品に携わりたいか、どういった会社で働きたいかをしっかりイメージすることも大切だと思います。(高橋様)
紙での作業も大切にしながらデジタルのメリットを追求するためにも、絵コンテ、原画、動画、各種チェックなど、一連の基本動作を「CLIP STUDIO PAINT」でカバーリングできる環境を作っていっていただければと思います。
今回秋のアップデート(*2)でカメラワークが可能になる事は大きなメリットだと感じます。この事によって原画や絵コンテが「CLIP STUDIO PAINT」でより自由に行える時代がくるのではないかと思います。
また、カメラワークが可能になることで、アニメーターが演出的な視点を身につける事ができるようになる点も良いですね。アニメーター、演出さん同士のコミュニケーションもはかどりますし、作業ソフトによる垣根がない事によって、他分野を目指せるようになります。
現在業界内ではデジタル移行への過渡期を迎えていると感じています。各社様々なソフトを使用しデジタルの可能性を模索している最中でしょう。
もともと業界では「Stylos」、「PaintMan」が作業の中心でした。一つの会社の、一つのソフトで、各部署の作業を行えることは、連携という意味でも効率化への一歩であると考えています。
実写映画などの撮影は全スタッフが一堂に会しますが、対してアニメは分業制です。一つのソフトで一連の工程が分かるようになれば作品全体の共有感も増し、クオリティも上がると期待しています。
「ちびまる子ちゃん」を見ていた子供たちは、中高生になると一旦離れるんですよね。ですが大人になって改めて観て頂いたときに「ほっとする」「すごくあったかい」という声をたくさんいただきます。そういった声を聞くと「ちびまる子ちゃん」は”帰るところ”であるべきだと感じ、やはり日本アニメーションが求める所はここだと再確認できました。
デジタルツールの導入をしても、日本アニメーションの方針や理念にあった使い方を探りながら頑張っていきたいと思います。その中の一環として作画の効率化の模索もありますが、もっと良い作品を作るための工夫についても忘れないように考えていきます。
「違ってしまうからやらない」のではなく「違ってしまってもやらないといけない」という考え方が必要です。その中で「どう作品をよくしていくか」を追求していき、今後も愛される作品を作っていきます。
昭和50年の設立以来、日本アニメーションは「世界の子供や大人たちに素晴らしいアニメーションを提供し、感動を与え、人間性の涵養に寄与したい」という創業者の理念の下、『世界名作劇場』『ちびまる子ちゃん』等120を超えるアニメーション作品を制作してまいりました。
今後は、創業者の“理念”や“想い” を大切に受け継ぎ、皆さまの生活のあらゆる場面で“夢と感動を与えるアニメーション”を作り続けていく事を、社員一同お約束致します。
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